一般社団法人日本産科婦人科遺伝診療学会 設立と入会のご案内
日本産科婦人科学会の「出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解」では、“出生前に行われる遺伝学的検査および診断は,十分な遺伝医学の基礎的・臨床的知識のある専門職(臨床遺伝専門医等)による適正な遺伝カウンセリングが提供できる体制下で実施すべきである”と明記されています。
また、生殖医療の領域においては、染色体異常あるいは遺伝子異常に起因する不妊症あるいは習慣流産の診断と治療について情報提供できるスキルは必要です。最近では、第三者による卵子提供や代理出産などを求めて海外への渡航治療を選択するケース、子の出自を知る権利とそれに伴う悩み・葛藤、さらには戸籍など親子関係についての法律的かつ倫理的な問題もクローズアップされています。婦人科腫瘍領域でも、Lynch症候群(大腸がん・子宮体がんなど)や遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の診断と治療には、産婦人科専門医・婦人科腫瘍専門医としてのスキルに加えて遺伝学的な知識と診察技術が求められます。
これからの産婦人科医療にとって、遺伝医療は不可欠な分野になります。
そこで、約一年間の準備期間を経て、日本産科婦人科遺伝診療学会を2015年10月1日に一般社団法人として設立いたしました。日本産科婦人科学会のサブスペシャルティとして、周産期、腫瘍、生殖、女性ヘルスケア、感染症の5領域があります。
遺伝医療は、上記のように産婦人科すべてのサブスペシャルティ領域を横断的に網羅する分野であると考えます。
ここに日本産科婦人科学会会員の皆様には、日本産科婦人科遺伝診療学会設立の趣意にご賛同いただき、本学会に入会して頂きたくお願い申し上げる次第です。
尚、第一回日本産科婦人科遺伝診療学会学術講演会は、2015年12月18~19日に長崎市ブリックホールで開催されます。産婦人科領域の遺伝セミナー等を企画して、臨床遺伝専門医の申請・更新に必要な単位も取得できるように準備しております。
また、臨床遺伝専門医暫定制度合格者の資格更新要件に対応して、遺伝カウンセリングロールプレイも企画しています。
殊に日本人類遺伝学会、日本遺伝カウンセリング学会、NIPTコンソーシアム、HBOCコンソーシアム等の産婦人科に関連する遺伝医療の分野でご活躍されている臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーの皆様、また日常の産婦人科診療で遺伝医療の重要性を認識している医療者の皆様には、日本産科婦人科遺伝診療学会に加入して、本会の充実と発展にご貢献頂けると幸甚です。
2015年10月1日
長崎大学医学部産婦人科教授
増﨑 英明